ご案内
債券の話といってもなかなかなじみにくい話題だろうなあというのが,そもそも本書を書こうと考えはじめた理由です。
実際,銀行に入行して以来約14年ほども債券やその他の証券に絡んだ仕事をしていたわけですが,専門書はともかく,包括的かつ簡単な入門書といわれるとなかなかいいものがないように思われます。
特に,会社の経理部に新たに配属になって初めて債券絡みの仕事をする方や,金融関係の会社の新入社員の皆さん,あるいは業務には精通しているものの,その基本的な理論を学びたいという社員の皆さん向けに良い入門書がないのではないでしょうか。
また,債券に関する簡単な入門書が欲しいと考えている学生や一般の方々の答えにもならないかなと考えています。
このような考えから,本書ではなるべく多くの例を使い,初めてこの類いの本を読まれる方にも,なるべくわかりやすく,しかもかなり専門的なところまで説明できるようにしようと考えています。
それでは,本文に入る前に簡単に内容についてご紹介しますと,まず,金融全般に関する基礎的な知識について説明します。
金利,為替,デリバティブ等の説明がこれに当たります。
債券をその形態別に紹介し,債券を発行する側を中心に,投資する側の立場も加味して説明します。
第V章では,主に固定利付債と金利の関係に焦点を絞り,投資家の立場から説明します。
最初はかなり基礎的なところから始まりますが,最後の方では,かなり実践的かつ専門的な話になってきます。
難しいと思われる部分にはなるべく例を使うように心掛けましたので,数字を入れて電卓等で確認しながらお読み下さい。
お金とその流れお金の役割とは何でしょうか。
具体的な例で考えてみましょう。
今,仮にデパートへ行って買い物をするとすれば,デパートに置いてある商品にはすべて値段がついています。
この結果,我々は同じようなセーターでも値段の高い,低いによって,ある程度正確にそれぞれの商品の価値を知ることができます。
これがお金の第一番目の役割である「価値の尺度」という役割です。
次に,数あるセーターの中からある1枚を買うことに決めたとすれば,代金の1万円をデパートに渡し,デパートからセーターを受け取ります。
デパートとあなたの間に1万円という紙幣に対する共通の信認がなければなりませんが,これが「交換手段」としての役割です。
最後に,迷った挙げ句,気に入ったセーターがなかったとします。
この場合,レストランで食事をして,1万円を使ってしまうか,または貯金してしまうわけですが,仮に貯金したとすれば,これがお金の「貯蓄の手段」としての役割になるわけです。
歴史的にみれば,昔は様々なものがお金の代わりをしていました。
例えば,江戸時代のコメとか,変わったところではヤップ島の穴のあいた石などがお金の代わりをしていたわけです。
お金の余っている人と足りない人さて,お金の役割は理解しましたが,原始経済から次第に豊かになってくると,人々の間には蓄えができてきます。
この蓄えを持っている人は,できるだけ有利にこの蓄えを増やそうとします。
蓄えの発生とその蓄えを有利に増やそうとする人々の動きは,人間社会に新たな展開を与えます。
例えば,竹かごを作るのが上手な人がいれば,その人は自分一人で作るよりも,たくさん人を雇って作ればもっとたくさん竹かごを作れ,結果的に蓄えを増やすことができると考えるかもしれません。
このように考える人達は,自分でお金を持っていなくても,お金を持っている人,または蓄えのある人からお金を借りてきて人を雇うことを考えるかもしれません。
その方が,自分の蓄えが十分な額になるのを待っているよりはるかに速いからです。
このような人達はお金をどこからか調達してこなければなりません。
また最近はこのような一般事業会社(かご屋さんに一般事業会社というのはややおおげさですが)のみならず,公共部門,例えば日本政府とか,各都道府県が活発に事業を行うことになってきており,この部門も資金の借り手として登場してきています。
このように,日本国内には,大きく分けるとお金の余剰部門である家計部門と,お金の不足部門である一般事業会社および公共部門の3つが存在していることがわかります。さて,それではお金の余っている人と足りない人がいるわけですから,余っている人(家計部門)から足りない人(事業会社,公共部門)へ,お金を回せばよいわけですがこの方法をみてみましょう。
家計部門から事業会社,公共部門へお金を回す一般的な方法は,各家庭が銀行,郵便貯金等へ預金し,その預金を銀行などの金融機関がまとめて,各事業会社または公共部門へ貸すという方法です。
各事業会社は,先程のかご屋さんの例のようにお金を借りて自分の事業を拡大しようとするわけですが,事業拡大のタイミングが悪ければ,倒産する可能性もあります。
したがって,この時一番重要なことは,各金融機関が貸し出しのプロとして各事業会社の事業リスクを的確に判断し,どのような金利でどのくらい貸すかという判断をするということです。
この判断が正しければ,各家庭の預金は金利が付いて増えていきますし,仮にお金を貸した事業会社が倒産してしまっても,預金者と事業会社の間の銀行が防波堤となり,各事業会社の持つ事業リスクが直接各家庭へ及ぶこともないわけです。
このように,資金の出し手と取り手の間に金融機関が介在し,プロとしての判断を行いながら橋渡しをしていく方法を間接金融といいます。
日本の事業金融は,従来この方法が主流ですが,最近個人でも事業会社の事業リスクを取ってもよいという人々が出てきています(図1−2参照)。
例えば,銀行に預金する代わりに,証券会社を通して各事業会社の発行する債券を購入するという方法が行われるようになってきています。
この方法ですと,仮に債券を発行した事業会社が倒産すると,債券が満期になっても償還されない可能性があります。
しかし,一方で直接事業会社の発行する債券を買うことによって事業会社の事業リスクを負うわけですから,銀行預金よりは利回りが良いのが通例です(ハイリスク・ハイリターン)。
このように,事業会社が一般の投資家から直接資金を集める方法を直接金融といいます。
さて,資金余剰部門から資金不足部門への資金還流の方法として,間接金融と直接金融の両方があることをみてきたわけですが,次に,直接金融の部分についてもう少し詳しくみてみましょう。
1975年から94年までに日本企業が行った直接金融の概略です。
国内と海外の両方について数字がありますが,まず,国内について述べますと,社債として分類できるものに,普通社債,新株引受権付社債(ワラント債),転換社債の3種類があります。
それぞれの社債については後で詳しく説明しますが,東京株式市場が好調だった89年は転換社債が26.7%,また各企業が直接株式をマーケットで新規発行する公募増資が21.8%,海外の新株引受権付社債および転換社債が35%と株式関連で83.5%を占めています。
一方,株式マーケットが低調だった92年,93年は普通社債の比率が上昇しており,92年では,国内普通社債が33.5%,海外普通社債が36.1%と,合計で69.6%に達しており,これら調達の方法は内外のマーケットコンディションにより大きく変化することがわかります。
このように,直接金融の部分でも,いろいろな選択肢があるわけですが,資金を調達する事業会社としては,どのようなマーケットコンディションにも対応し得るような体制づくりが肝要といえます。
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